実践から化学を学ぶことを通して“自ら考え、自ら実践できる人材”を育成します

CRISPR-Cas

こんにちは,高村です。

ちょっと時期を逸してしまいましたが,今年のノーベル化学賞は「CRISPR-Cas9」を用いたゲノム編集技術を開発したJennifer A.Doudna,Emmanuel Charpentier両先生の受賞となりました。(NHKの紹介記事はこちら

CRISPRは大腸菌などに存在する「侵入ウィルスをやっつける」ために用いられるDNA配列で獲得免疫として機能しています。極々簡単に記載するとCRISPRで細胞内に侵入してくるウィルス等のRNAを認識して,Casというタンパク質で認識されたRNAを切断して,ウィルスの侵入を防いでいます。このシステムを利用して,今では,哺乳類の有するすべての遺伝子配列に対して,その配列を簡便に組み替える事が可能となりました。CRISPR-Casのシステムが紹介されてからまだ7年ほどしか経っていません。受賞までの期間の短さが,この方法がいかに(簡便で)優れている方法かを示していると思います。CHRISPRの発見は国内の研究者によってなされていますが,この研究結果を見たいろいろな研究者が「これがゲノム編集に使える!」とひらめいて,システムを競争的に開発してきたのでしょうか。

CRISPR-Casのシステムはいわゆるゲノム編集に用いられる画期的な方法で,その詳細は,様々なHPで紹介されていますので,ここでは詳しくは述べません(リンク先はタカラバイオの説明です)。「遺伝子を認識して切断する」というシステムの利用可能性はとても広く,例えば環境中や食品中の病原性バクテリアやウィルスの検出に用いることが出来ます。CRISPR-Casシステムを利用したDETECTRやSHERLOCKと呼ばれる遺伝子の検出方法は,遺伝子組み換えに用いられるCas9ではなくCas13やCas12を用いています。YoutubeにSHERLOCKの方法が紹介されています。

 

またこの方法を用いた新型コロナウィルスの検出方法もすでに論文に紹介されています。現在PCRでコロナウィルスの遺伝子の検出が行われていますが,それに取って代わる日が来るのでしょうか?試薬の供給やシステムの有効性が示せれば,その日が来るのももう間近かもしれません。(一部の地域では緊急的に利用されているようです。)

環境分析に携わる身としては,CRISPR-Casシステムを「環境分析」に用いることに注目しています。生体内の反応を模倣して,新たな分析系を開発するというのは,従来の化学反応を元にした分析より,選択性,特異性,感度が高くなる可能性を秘めています。「薬剤を体内輸送するウィルスを模したカプセル」何ていうのも魅力的ですね。

そんなことで,以下のものを考えました。ウィルスを取り込んで壊してくれる大腸菌を模倣したロボットです。(遺伝子組み換えした大腸菌でよいのかも・・ダメかも)。ウィルスの細胞表面レセプターを大腸菌ロボット表面に発現させて,細胞内へ取り込み,CRISPR-Casシステムでウィルス由来RNAを破壊しようというものです。ただの妄想ですが,誰か実現させてくれないかな~(笑)。