各研究室の様子をまとめたビデオです
応用化学科の研究室は、「環境-バイオデザイン」「マテリアルデザイン」「エネルギーデザイン」の3デザイン体制で活動しています。いずれも社会にとって必要不可欠な分野であり、学生はこれら3デザインに分類された専門科目を履修することができます。
地球規模で広がりつつある環境汚染の現状を把握し、化学物質による汚染の実態、 メカニズムの解明や浄化に関する研究と教育を行います。
環境化学・環境生物研究室(齋藤研究室)
【 深海に生息する有用微生物の探索 】
深海などの極限環境は、一般的な生物や動植物、微生物が生息できる通常の条件から逸脱している環境のことを言います。このような高圧、高塩分、低温、低酸素、などの極限条件で生息する微生物『極限環境微生物』は、その逸脱した環境に生息する がゆえに、 通常の微生物には持っていない特殊な能力を有する 可能性があります。
しかし、現在、 極限環境は未だ未解明な部分が多いことが知られています。 当研究室では、極限環境下にある深海環境と 塩湖環境における微生物群の網羅的な解明を目的に研究を進めています。
現在探索中の地点は、 日本近郊の小笠原弧・ベヨネース海丘(水深 832 m)、インド洋・カイレイフィールド(水深 2417 m)、マリアナ弧・ウラシマサイト (水深 2899 m)などや高塩濃度(30~40 %)である 塩湖(国外)などに生息する微生物群の探索を行っています。解析には、微生物の遺伝子を網羅的に分析・解析するために最先端の次世代シーケンサーによる解析を行い、微生物の特定を行っています。
(1)深海海底の微生物
深海からは、数千~数万の微生物種が見つけられており、水素を発生する水素酸生菌(エネルギーに使える ! )、磁性を持った微生物(世界で最も小さな磁石で人の体内中を医薬品を運ぶ材料に使える! )、光る微生物、アルコールを生じる微生物(燃料に使える! )、 有害物質を分解する微生物(環境をきれいにする! )、など、多種の特徴を持つ微生物が発見されています。新規な微生物種には名前をつけています!
(2)塩湖の微生物
海洋の塩濃度の 10 倍以上ある塩湖でも、なんと微生物が生息しています。 驚かされることが多々あり、たいへん興味深いですね。世の中にはまだまだ不思議なことが数多くあります。発見と驚きが同時に体験できる研究ですね。
私たちと一緒に未知の世界に足を踏み入れて、実験・研究をしてみませんか。体験を通して、サイエンスの世界をぜひ楽しんでください。「不思議、発見!」の世界です。
環境と生態影響研究室(高村研究室)
【神奈川県下の河川水の遺伝毒性評価】
環境中には様々な化合物が存在しています。その中には生物のDNAに傷をつけるような化合物も存在します。DNAに傷をつけるような化合物を「遺伝毒性物質」と呼んでいます。遺伝毒性物質は多種多様に存在していますので、河川水中の特定の化合物の存在量を測定するのは困難が伴うことが多く、また高価な機器を利用することで達成できることが多いです。そのため、分析が困難な化合物の量を測定するのではなく、「河川水中の遺伝毒性物質の活性(遺伝毒性活性:DNAにどの程度傷をつけるのか)」を微生物を用いて測定を行うことで、比較的安価で、大量のサンプルを処理することが可能となります。微生物などの生物を用いて活性を測定することをバイオアッセイと呼んでいます。
今回、遺伝毒性活性を測定するためにUMUテストを利用しました。UMUテストではサルモネラ菌TA1535株にpSK1002というプラスミドを導入した菌株 (TA1535/pSK1002) を利用し、DNAに傷がつくと細胞内の(生物的な)反応により、LacZというガラクトースー基質結合部位を加水分解する酵素(β-ガラクトシダーゼ)が発現する性質を利用します。その発現量は毒性活性に総じて比例するので、この β-ガラクトシダーゼの基質加水分解量を測定することで、遺伝毒性活性を評価することができます。河川水の遺伝毒性活性を測定するためにTA1535/pSK1002株をさらに改良したNM8001を利用しました。NM8001ではさらに酸化的なDNA損傷を感度良く検出できます。また、当研究室ではガラクトシダーゼ活性の測定にBugBusterという温和なLacZ抽出試薬、TokyoGreen-ßGalという蛍光基質を利用することで、従来の約2倍の感度で測定する新しい系を構築しました。神奈川県下の河川水23箇所の河川水を採取し、その2Lから有機成分を抽出しUMUテストで調査したところ、いくつかの河川水で遺伝毒性活性を示すことが明らかとなりました。この活性は、採水日を変えて測定しても継続して活性を示すことから、継続的な汚染があることが推定されました。
(本研究内容はH29年度卒業研究、本研究内容は日本化学会第 99 春季年会、アジア環境変異原学会(ACEM)第6回大会及び日本環境変異原学会(JEMS)第48回大会合同大会で発表されました)
新しい化学物質(マテリアル)の合成や分子設計及び材料評価に関する研究と教育を行います。
高分子デザイン研究室(三枝研究室)
三枝研究室では、次の4つのテーマを中心に進めています。
1) 非石油系イソソルビドポリマーの開発
2) 使用済み PET 樹脂を原料に用いたレジスト用樹脂の開発
3) 新しい有機-無機複合材料の開発:ポリイミドフィルム及び微粒子上へのヒドロキシアパタイ
トの積層
4) 多機能性トリアリールアミンポリマーの開発
一例を挙げて、少し詳しく説明します。化石燃料の大量消費に伴う環境破壊やその将来的な枯
渇等を見据えて、脱石油依存を目指したバイオマスの利用が急速に進められています。高分子化
学の分野でも、例えば、デンプンを酵素分解し、乳酸発酵して得られる乳酸からポリ乳酸が、グ
ルコースやショ糖を酵母発酵して得られるバイオエタノールからはバイオポリエチレンが製造さ
れており、このようにバイオマスより誘導される物質を原料として多くのバイオベースポリマー
が合成されています。しかし、そのほとんどは耐熱性が低く、用途は汎用用途に限定されます。
我々は、安価なグルコースより容易に誘導される“イソソルビド”に着目し、これを原料にして
広い用途を持った高性能ポリマーの合成へと展開を図っています。例えば、イソソルビド(I)から
3 工程を経て誘導した酸二無水物(IV)から得られるイミドポリマー(VII)は、高いガラス転移温度
と熱分解温度を有する一方で、多くの有機溶媒によく溶け、これより作製されたフィルムは優れ
た紫外-可視光透過性とエンジニアリングプラスチックに相当する高い強度を有しています。
有機合成化学研究室(山口研究室)
まだ知られていない新しい有機化合物を創る ことを研究しています。 人間が知りうる 有機
化合物は何百~何千万個と いわれており 、 毎年新しい構造の化合物が創られています。 「有
機合成化学研究室」 では「ヒダントイン誘導体」「アズレン誘導体」 に注目し て合成研究を
行っています。 それらは、 「抗がん作用」 や「ナトリウムチャネル阻害作用」 など生物活性
を示すものが多く 、 より活性の高い化合物の合成を目指しています。 さらに、 「アズレン誘
導体」 は綺麗な色を示すことが多く 、 合成することが楽しくなってきます。
自分たちで、 この世に無い有機化合物を創り出すことは、 ワクワク する 研究です!
写真上: クロマトグラフィーによってアズレンを分離している ところ (3 種類混ざってい
る !) 写真下: アズレンは構造によって色が変わる !
機能性有機材料研究室(森川研究室)
森川研では、「天然成分を化学原料としたポリマー合成」と「抗酸化物の化学修飾とポリマー化」をメインテーマとして研究を行っています。
例えば、天然成分を原料としたテーマでは、廃棄する果物やかんきつ皮からとれるテルペン誘導体を、化学反応によってプラスチックに変換する試みを行っています。反応条件や様々な触媒を検討して、最適な合成条件を探しています。また、合成できたポリマーの解析を行い、化学的性質を明らかにしています。
これらを通じて、自然に優しい・自然環境に戻りやすい材料を作り出すことにチャレンジしています。
限りある資源やエネルギーの有効利用、省エネルギーで効率よく物質を変換・生産するシステムに関する研究と教育を行います。
資源エネルギーシステム研究室(大庭研究室)
化学を工業的に活用する方法について研究しています。その中でも環境問題の解決の助けとなるようなシステムを構築し、実験を重ねて実現させていきます。これまでに「重金属に汚染された土壌のオンサイト浄化システム」「超臨界二酸化炭素を利用した汚染水の処理」「二酸化炭素を分離できる燃焼方法」等について取り組んでいます。今後はマイクロプラスチックスなど、新しい環境問題にも積極的に取り組むことで社会に貢献できる人材の育成と技術開発を進めてまいります。就職先としては主に化学工業(化学プラントや空調機器、水処理装置の設計、開発、施工管理)で、卒業研究で学んだ事柄が生かせます。