実践から化学を学ぶことを通して“自ら考え、自ら実践できる人材”を育成します

COVID-19

COVID-19の影響は今の所、終息の気配が見えないまま、非常事態宣言が出されました。本学も大学閉鎖となっています。
今のところ、5月6日までは様子を伺うしかない状態になっています・・。日本ではCOVID-19の原因ウィルスであるコロナウィルスSARS-CoV-2のPCRによる検出数が他国より少なく、検査数が少ないためとも言われています。

COVID19の検出には今のところ2種類があり、それについて簡単な紹介記事を見つけました。
PCRという、ウィルスの遺伝子の一部を増幅させて検出する方法と、体内に生成した抗体を調べる方法です。どちらも一長一短ですが、PCRでは検出までに時間がかかるというのが欠点でしょうか。この「検出時間を短縮する」ということに多くの研究者が取り組んでいます。マイクロ流量を利用したものや、PCRで必要な温度操作を簡易化(等温にした)ものなどにより、短い時間で検出する事が可能と言うニュースが時々WEB上でも見られます。

COVID-19 Test PCR test    COVID-19 Antibody test

PCR法と抗体検出法 (DOI:10.1002/chemv.202000033より)

 

さて、COVID-19の原因ウィルスSARS-CoV-2ですが、Nextstrainというサイト(nextstrainでは2019-nCoVで記載)によるとその遺伝子配列からいくつかの亜種に分かれることがわかっています(刻々と遺伝子が変異しています)。下の図はわかりますでしょうか?簡単に述べると遺伝子の近いものをまとめている図です(遺伝子変異の近い物同士がまとまっています)

COVID-19の遺伝子による系統樹 (Nextstrainより)

遺伝子配列の近いもの同士をクレードで分類しますが、現時点でAクレードに7種類、Bクレードに4種類の亜種がいます。発生初期の段階で、Aクレード(A3以外)、Bクレード、A3クレードの3種類がいて、それが日が立つに連れてどんどん変異しています。国内にはA~Bのいずれのクレードのコロナがいることがわかっていますが、このクレードを調べると、ウィルスがどこから来たかがわかります。例えば「日本で最近診断および採取された16種の遺伝子配列すべてが、2つのクラスターに分かれます。興味深いことに、これらのクラスターは他の日本やアジア(で検出された)の遺伝子配列とは関係していませんが、主に米国とヨーロッパで見られる遺伝子配列に含まれています。(Nextstrainより)」つまり、最近の国内のCOVID-19はヨーロッパ由来が主流ということになります。ただし、報告されている遺伝子配列をもとにしているので、報告されていないものについては全くの不明です。ちなみに図の青っぽい点はアジア、緑〜黃系の点はヨーロッパ、オレンジ〜赤系はアメリカ大陸で見いだされた遺伝子型です。

しっかりと分析していくと、感染源不明のCOVID-19もPCRによるSARS-CoV-2の遺伝子配列を調べることにより場合分けが可能かもしれません。感染源の大まかな推定もできる可能性があります。科学において、「分析する」というのは基盤となる重要なカテゴリーであることがお分かりいただけると思います。

と思ったらこんな記事が出ていました。「米NY市の新型コロナは「欧州由来」、2月から感染拡大 米研究」

多くの研究者がこのウィルスの撲滅のために努力をしています。オックスフォード大学では、研究に関連する特設サイトがあります。応用化学科でも一部ですが検出系の開発を進めています。