実践から化学を学ぶことを通して“自ら考え、自ら実践できる人材”を育成します

水に関連した施設見学(1)

こんにちは大庭です

大庭研究室では主に化学プロセスに関する研究をしており、卒業生もプラント設計、管理、水処理関係、空調関係の会社へ進む割合が高いです。
そこで、毎年工場見学などの施設見学を行い、実際にどのような装置が稼働しているのかを見てもらっています。
見学先は学生が決めていますが、これまでに蒸留所、水力発電所、自動車生産工場といった施設を見学してきました。
今年は水に関連した施設ということで、埼玉県の今市浄水場と首都圏外郭放水路に行ってきました。
今回のブログは今市浄水場についてです。

今市浄水場は100年以上も前に稼働を開始し、今でも稼働している施設です。職員の方に大変丁寧にご対応していただきました。

・上水道を導入するにあたり、上質でしかも長期間に渡って利用が見込める水源を検討したところ、中禅寺湖までたどり着いた。

・そのため浄水場に入る水の水質が、濁り具合としてはそのまま上水道の基準内である(大雨などで濁る際は凝集剤を投入)。

・後に水を発電に使用することになり、川の対岸にある水力発電所を出た水を浄水場に戻す設備(サイフォン管)を導入。
・イギリス式の方式(緩速濾過)を導入し、戦後に上水道の基準が変更となり塩素消毒施設を追加。
・緩速濾過は砂とその上に生える微生物膜を利用する方式で、微生物の管理が重要。

・電力もほとんど使う必要が無く、後に追加したポンプ(ろ過池の上澄みの水を利用するために沈殿池に戻す)を使う程度。
・構内の資料館(イギリス風の建物)内には、建設工事の際に使用した機材や、古い機器が展示されている。

・資料館そのものも建築物として貴重で、建物目当ての見学者も多い。

良い水源を求めてかなり遠方の中禅寺湖までたどり着くという大胆な計画を立て、電力も十分でない中、緩速濾過というエネルギーのかからない方式を導入し、100年以上経過した現在でも現役で稼働するという結果を残しています。

これらのことを学生がレポートにまとめており、十分に学んだものと思います。おそらく将来の仕事にも生かしてもらえるのではと考えます。