実践から化学を学ぶことを通して“自ら考え、自ら実践できる人材”を育成します

イソジン♪

こんちは,高村です

なんだか急ににぎやかしくなってきましたイソジン♪ 。大阪府知事が新型コロナウィルスの口腔内の消毒に効くということで,平たく言えば「うがいをするときには使ってね」と,伝えていました。と,いうわけで現在アマゾンでも品切れ中です。手洗いや手の除菌はアルコール等で頻繁にできますが,「うがい」って,外出中はなかなかできなかったりします。電車に乗ったあとや,混雑しているところに行ったあとにすぐに副鼻腔・口腔内を除菌できるとそれなりに感染防御の効果があるかもしれません(ただの気の持ちようかもしれません)。

イソジンの有効成分はポピドンヨードとよばれているもので,イソジンには7%ほど含有されているようです。で,「ポピドンヨードって何?」ということになりますが,水に溶けやすい高分子であるポリビニルピロリドンとヨウ素分子の錯体です。ヨウ素は分子性で水に溶けにくいため,複合体化して水に溶けやすくしたものになります。

そんなわけで今日はヨウ素のお話。ブログタイトルは最初の一行で終わりです(笑)

ヨウ素はあまり馴染みがないかもしれません。小学校で習ったヨウ素ーデンプン反応なんかが記憶にあるくらいでしょうか?実は,ヨウ素は日本が誇る(唯一と言っていいくらいの)天然資源であり,生産量は世界の約30%にあたります(世界第2位)。
周期表でいうとハロゲン族に属しており上から『F(フッ素),Cl(塩素),Br(臭素),I(ヨウ素)』となっています。同じ族に属する元素は性質が似ているとなっていて,Clが塩素ガスや次亜塩素酸イオン(ClO)などが殺菌効果があることを考えると,ヨウ素にも何やら殺菌効果がありそうです。(最近話題になった次亜塩素酸(HClO)についてはこちらに記載があります)

ヨウ素分子は水中では

I2 + H2O ↔ HIO + I + H+

のように一部解離します。(もちろん,ヨウ素由来のイオンは三ヨウ化物イオンI3もありますが,今回は簡易的な説明で省略しています)

消毒効果が高いのはI2およびHIOで,HIOの効果はI2の約2倍になります。ウィルスの消毒にはヨウ素のアルカリ性水溶液が効果があることがわかっているので,HIOが抗ウィルスに効果があるようです。ということはアルカリ性で使用すると効果が期待できそうですね。実際にアルカリ条件下でHIO分子の存在割合が大きくなります(水中の全ヨウ素化合物に対して)

ポピドンではありませんが,ヨウ素グリシン複合体を用いた実験では,ウィルスに対しては殺菌効果に濃度依存性がないと指摘されています。すなわち効果を求めるには,ある程度以上の濃度が常に必要です。

つまるところ消毒効果が得られるためには,条件(pH),接触時間,濃度が重要になってきます。

いろいろな消毒作用のある化合物について,まとめているサイトがありましたので,それらが参考になるかもしれません。題して「化学者のための消毒剤ガイド」です。実はこのサイトを含め一年生の特別専攻の学生が前期の授業で「消毒剤」についてまとめてくれました。

「化学者のための消毒剤ガイド」は消毒剤をいくつかに分類しています。少し紹介しますと

  • まずはアルコール:エタノールだけじゃなくてイソプロパノールも殺菌性があります。よく「変性アルコール」として売られているものはイソプロパノールが入っていたりします。
  • 続いて過酸化水素(H2O2)や次亜塩素酸イオン,こちらは酸化剤です,細胞膜などを酸化して殺菌します。過酸化水素は薬局で売っていますね。次亜塩素酸イオンはいわゆるハイターです。
  • 四級アンモニウムイオンなどの界面活性剤も殺菌剤としてよく使われます。オスバン液で売られていますね。
  • 意外なところで乳酸やクエン酸も紹介されています。

これらの化合物はうがい薬としてはどうでしょうか?希釈すればいずれも使えそうですが,口の中に入れっぱなしとか飲み込むというわけにはいかないですね。クエン酸やら過酸化水素にいたっては過去にひどい目に合ったことがあるので,口腔内での使用は差し控えたいです。

こうしてみると,「うがいをしないでいいよ」って殺菌剤はなかなかありません。が,四級アンモニウム塩を利用したスプレーなんかは販売されているようです(有効濃度が薄い気もします)。アルコールでうがいで殺菌して飲み込むはできるかもしれませんが,70%以上の濃度はかなり辛いです。昔,父親がお茶でうがいして飲んでいましたが,あれはもしかして殺菌してたんですかね・・,飲み込んでいいんですかね・・?とりあえずリステリンで口内除菌(歯周病対策)しときます。